zkFMI
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規制

実際に運用するときに触れる口座と法令を、地図として描いた。設計が後になって構造的な問題に行き当たらないためである。これは法的助言ではない。 どれが合法かは、誰がどこで運営するかで決まる。その判断は法律顧問の仕事である。この地図でできるのは、検討の範囲を絞ることまでである。

出典: defmi/REGULATION.md, qomm/REGULATION.md · 参照資料はそこに列挙

構成が法制度に求めるもの

  • N1: 非公表の注文をシステムが評価することを認める市場区分。 QOMM は構成上、取引前に見積を一切開示しない。これが慣行として黙認されるのではなく、規則として許される制度が必要である。
  • N2: 決済台帳が法的な記録になれること。 DeFMI は、他所で管理される正本の登録簿を写す鏡か、DeFMI 自体が登録簿か、のどちらかである。後者には「台帳の記録が権利を構成する」と定める法律が必要である。そのような法律があるかどうかが、法域ごとの最大の違いである。
  • N3: 分散台帳から到達できる、実際の finality(決済完了性)を持つ資金脚。 これがないと、DvP は片側だけが原子的になる。

この 3 つとは別に、費用がさらに 2 つある。7 台のノードの運営者は 7 つの第三者だが、その可用性の責任は依然として市場が負う。そして「お見せできません」を受け入れる監督当局は、どこにもない。

5 つの法域

N1: 非開示の市場N2: 台帳が権利になるかN3: 資金脚既にあるもの
日本PTS(私設取引システム)の認可。金融商品取引法第 30 条、負担は重い振替法のレールでは不可。金融商品取引法第 2 条第 3 項のレールでは、セキュリティトークンに限り可日銀ネット(BOJ-NET)。資金決済法上の電子決済手段START(ODX)。ST PTS は 2023 年 12 月から稼働
スイスDLT 取引施設の免許。専用に作られた制度で、一つの免許が取引・決済・保管を包む可: 債務法第 973d〜973i 条、2021 年 2 月 1 日施行。登録簿の記録がそのまま権利である。SDX と SNB のホールセール CBDCBX Digital が 2025 年 3 月に初の DLT 取引施設免許。SDX は 2021 年 9 月から。wCBDC でデジタル債 6 本、CHF 750m 超
EUMTF/OTF。加えて規則 2022/858 の DLT MTF と DLT TSS加盟国ごとに異なる。ドイツの eWpG では登録簿が証券を構成するT2。MiCA の電子マネートークン。ECB の DLT 決済の取り組み2025 年 5 月 31 日時点で、認可済みの DLT 基盤 3 件
英国MTF/OTF。加えて Digital Securities Sandboxサンドボックスの範囲内では可利用できる中で最強: BoE のオムニバス口座により、DLT 決済システムの下に中央銀行マネーを置けるDSS は 2024 年 9 月から受付。Fnality はポンド建てで 2023 年 12 月から稼働し、finality の指定を受けている
シンガポールRecognised Market Operator。機関投資家向けの区分がちょうどホールセールに当たる最弱: 台帳の記録を権利とする法律がないMAS のステーブルコイン枠組み。Project OrchidProject Guardian: 実在の機関、実際の取引、規制当局が同席

日本: DeFMI は振替口座簿になれない

振替法(社債、株式等の振替に関する法律)の下では、権利は振替機関と口座管理機関が備える振替口座簿の記録に帰属する。その傍らに置いた commitment 台帳の記録ではない。残る選択肢は 2 つある。(a) 鏡として、つまり制御面として動かす。DeFMI は振替口座簿を写し、規則・状態・受領証を検査するが、正本にはならない。代償は二重記帳であり、食い違えば常に振替口座簿が正しい。これが既定の方式であり、照合証明はこの方式の費用である。(b) 金融商品取引法第 2 条第 3 項の電子記録移転権利のレールで発行する。この場合は DeFMI の記録がそのまま正本の記録になり得る。ただし対象はセキュリティトークンに限られ、上場株式には決して使えない。

DeFMI が何でないかも述べる。既存の処理の連鎖は、執行、確認、清算(JSCC: 更改、ネッティング、証拠金、保証)、証券の引渡し(JASDEC)、資金の引渡し(日銀ネット)に分かれる。DeFMI が担うのは引渡しである。2 者のトークンを同時に交換しても、CCP の機能は再現されない。更改とウォーターフォール(破綻時に損失を吸収する順序)を供給する部品は DeCCP である。コードが裏付けない主張で代用はしない。

日本: 自己保管と顧客資産の鍵管理

確認日: 2026-09-12。自己資産の支出鍵を本人が保管することだけで、直ちに他人の資産を管理する事業になるわけではない。一方、秘密鍵の保管一般に制約がないともいえない。note が表す法的権利、運営者の業態、支出・復旧権限の実態を分けて判断する。

  • 暗号資産の管理:金融庁は、利用者の関与なく、事業者が単独または関係事業者と共同で資産を移転できる状態を判断要素にしている。MPC や分割鍵という名前だけでは規制対象外にならない。事業者側の情報を合わせても移転できない場合や、暗号化鍵の復号情報を持たない場合も、ガイドラインが例示している。
  • 顧客のセキュリティトークン:金融商品取引業者が電子記録移転有価証券表示権利等の預託を受ける場合、分別管理と、オフライン保管または同等の技術的安全管理措置などが求められる。一般利用者の自己保管とは適用場面が異なる。
  • 設計への当てはめ:復号だけを許す鍵、支出できる鍵、鍵を再発行・復旧できる権限を区別する。運営者が証明を検証するだけなのか、本人なしに代理支出できるのかを確認する。暗号資産の管理に関する基準を、証券・電子決済手段・その他の債権へそのまま適用することはできない。

これは規制上の論点の整理であり、zkFMI の適法性・非該当性の確認ではない。実サービスでは、資産分類、利用者、通常時と復旧時の権限を示して専門家・当局に確認する必要がある。

金融庁・暗号資産の管理に関するガイドライン · 金融庁・監督指針 IV-3-7-6

何を作るかを変える発見

2024 年の MiFIR 見直しは、債券・仕組み商品・排出枠について、取引前公表の義務の対象を連続指値板と定期オークションに絞った。RFQ 向けの免除規定は、不要になったとして削除した。つまり EU の非株式市場では、RFQ システムは取引前に見積を公表する義務を負わない。QOMM が提供する秘匿性は、黙認された例外ではなく、立法者が選んだ既定の状態である。株式はその逆である。したがって EU と英国での QOMM の自然な居場所は債券とデリバティブになる。そこは市場が既に RFQ で取引している場所でもある。これは日本には不利に働く。日本で摩擦があるのは株式の振替レールだからである。

第二の帰結がある。RTS 27/28 の執行品質報告は、誰も検証できないという理由で廃止された。一方、第 27 条の最良執行義務は残っている。QOMM が生み出すのは、検証できないために廃止されたその報告の、検証できる版である。これがこのシステムの持つ最も強い規制上の論拠であり、どの DLT 制度にも依存しない。

ノードの所在と準拠法

2 種類の配置は、2 種類の攻撃者に向き合う。一つの監督当局の下に置く地域委員会が向き合うのは、合法的アクセス(法令に基づく開示要求)の手続きを経なければならない攻撃者である。複数の法域に分散させた委員会が向き合うのは、複数の法秩序にまたがって運営者を買収しなければならない攻撃者である。どちらの配置を使うかは銘柄ごとに決める。準拠法を決めるのは登録簿だからである。配置の計測では、分散委員会の費用は見積 1 件あたり 26 s である。そして、それを最も必要とする市場でこそ、この費用を支払えることを示している。

純粋な暗号資産レールでは、この論理が逆転する。 N2 は無償で満たされる。競合する登録簿がないのでチェーンが記録そのものであり、だからこそ一つの台帳上の DvP がそもそも可能になる。しかしチェーンは記録を与えても、強制力は与えない。スイスの台帳記録は裁判所が執行する権利である。チェーン上の記録は、チェーン外の誰にも尊重する義務がない記録である。移転の finality は請求権の finality ではない。ステーブルコインの移転が、その例をちょうど示している。認可する監督当局がなければ、地理的分散の代わりになる合法的アクセスの経路もない。だから分散委員会は贅沢品ではなく、答えになる。そして委員会の構成を決めるのは、登録簿ではなく運営者になる。

主張してよいこと、いけないこと

主張してよい

  • 注文がメイカーにも、どの単一ノードにも届かないまま、価格を作れる。計測済み。
  • 返された価格が、登録された規則の下で最小値だったこと。これを誰でも検査できる形で証明できる。
  • ノードの不作為、二重署名、古い状態の再利用は、検出でき、責任者を特定できる。
  • 決済は、金額・価格・銘柄名を読まずに、残高の保存、非負であること、二重使用の有無を検査する。
  • 選択的開示は三つの粒度で実装済みである。commit した一つのフィールドの開示。ウォレットの一つの scope(閲覧範囲)を名指しした監査人へ開くこと。そして、誰も単独では保持しない値について定足数が組み立てる命題。

主張してはいけない

  • 「これは法令に準拠している」。合法性は運営者と法域で決まる。
  • 「秘匿計算だから個人投資家にも安全」。投資者保護は別の層の問題である。
  • 「DeFMI は振替口座簿を置き換える」。振替法の下では置き換えられない。
  • 「CCP はもう要らない」。2 者の同時交換は更改ではない。
  • 「監査可能だから統制がある」。証拠は統制の材料であって、統制そのものではない。